読書メモです。
ユニコーン企業のひみつ ―Spotifyで学んだソフトウェアづくりと働き方
- 作者:Jonathan Rasmusson
- 発売日: 2021/04/26
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
自分で大切・面白いと思った部分のみのメモなので面白そうという方は買っていただいて全体を読んで頂いた方が良いと思います(とても参考になりました)
日本の読者の皆さんへ
- 成功している会社は従業員に何をすべきかを指示しません。代わりに、みんなを導き、信頼し、権限を与えます
1章 スタートアップはどこが違うのか
- スタート アップのソフトウェア開発では、スケジュールや納期、予算は関心事の中心で はない。彼らが重視するのは、顧客、インパクト、学習
- スタートアップが「自 分たちは素早く動かねばならない」と常に感じている
- スタートアップはち~を信用し、権限を与える。権限と責任を与える
- エンタープライズ企業では計画通りに進むことが評価される。スタートアップは正反対。スタートアップは計画すべきことを探している
- スタートアップはプロダクトを一回限りのものとしては扱わない。何度もイテレーションを繰り返す
- つまり、こういうこと
- 成功を再定義する
- 学習とは何であるかを心得る
- 未知の状況でもうまくやっていける人材を探す
- 失敗してはいけないという思い込みを払拭する
- 権限を与え、信頼することで仕事をやり遂げる
2章 ミッションで目的を与える
- プロジェクトの問題点
- 期間があまりにも短い
- フィードバックの機会がない
- プロジェクトはあまりにも融通が利かない
- プロジェクトは力を奪う
- プロジェクトは間違ったことにフォーカスしている
- テック企業は「なにか」を使う
- ミッションとは、チームに与えられる、抽象度が高めの目標
- ミッションはチームの自発性を高める。従業員に自分の頭で考えさせる。チームが自発的に仕事に取り組むようにする
- テック企業のプロダクトの品 質が高い理由。システムを開発した人たち自身がメンテナンスもしている。これが大きな違いを生む
- ミッションについて
3章 スクワッドに権限を与える
- スクワッドとは、少人数で、職能横断(Cross-Function)の、自己組織化されたチームだ(多くの場合、8 名以下で編成される)
- スクワッドがエンタープライズ企業のアジャイルチームと明らかに違うのは、 与えられている権限と信頼が段違いだというところ
- エンタープライズ企業のアジャイルチームとスクワッドの違い
- スクワッドは自分たちで仕事を生み出す
- スクワッドは自分たちで作ったものをメンテナンスする
- スクワッドは自分たちで優先順位をつける
- スクワッドは計画よりもインパクトを重視する
- スクワッドは準備ができ次第リリースする
- スクワッドは最 初のバージョンは「正しくない」と心得ている。だから顧客からフィードバックを得たい。しかしフィードバックを得るにはリリースしなければならない。そこで、テック企業はどんどんリリースする
- スクワッドは自律している
- スクワッドは手を動かす人だけで編成される
- プロダクトマネージャー(「プロジェクト」マネージャーと混同しないこと)は、 スクワッドが「何をするのか」を導くことに責任を持つ。スクワッドと協力 して戦略を定義し、ロードマップを策定し、機能の定義を考える。マーケティ ング、売上予測、損益計算の責任にも何らかの関わりを持つ
- テック企業におけるプロダクトマネージャーの人物像
- 技術に明るい(多くは元エンジニア)
- 「プロダクトセンス」にすぐれている
- 強いリーダーシップと交渉スキルを備えている
- データサイエンティストは数学者でありエンジニア。チームがデータを使ってプロダクトの意思決定を下せるように支援する
- 分離されたアーキテクチャのメリット
- 複数チームが並行して同じプロダクトに取り組める
- リリースを分離できる
- メンテナンスとデバッグが容易になる
- 「 爆発半径」を抑えられる
- もしあなたが、部下に権限と信頼を与えたにもかかわらず、それが結果にはつながらなかったとしよう。それはそれで悪くない。少なくとも「間違った人材を雇っていたんだな」ということがわかる
- 経営リーダーやマネージャー向けに、 簡単なヒント
- チームに発奮興起してもらおう
- チームに発奮興起してもらう、というのは何をすべきかを指示することじゃない。チームに時間の余裕と探索範囲の余地を与えて、物事を自分たちで考え られるようにすること
- 何をすべきかをあなたが指示してしまうと、チームはその仕事を「自分たちの仕事」だとは思わなくなる
- チームに間違えてもらおう
- ミスにつまずいてしまったチームを地面から立ち上がら せよう
- これには 2 つの効果がある。1 つ目。「間違えたって大丈夫」というメッセージ になる。間違えることはゲームの一部なんだ。2 つ目。「チームを信頼してます よ」というメッセージになる
- 「間違い」に備えよう
- 楽しい名前を選んでもらおう
- チームに発奮興起してもらおう
4章 トライブでスケールさせる
- 小さなチームでうまくいっていることをどうやって全社レベルにスケールさせるのか? それがこの章のテーマ
- Spotify は、トライブ、チャプター、ギルドという組織モデルを考える際に、次の原則を念頭に置いていた
- トライブ
- トライブとは、担当するミッションが類似、関連しているスクワッドがまとまったもの
- たとえば「決済」の領域を考えてみる。これをこなすのに複数のスクワッドが必要になったとする。登録、認証、支払い、といった分野を複 数のスクワッドで分担するなら、こうしたスクワッドのまとまりがトライブになる
- トライブはそれ自体がミニ企業のようなもの
- チャプター
- チャプターとは、同じ専門性を持つメンバーで構成される、トライブ内のグループ
- たとえば、トライブ内のテスター全員で品質保証チャプターを形成 したり、Web エンジニア全員でまた別のチャプターを形成したり
- トライブ内の同じ専門性を持つメンバーのマネージャーが「チャプターリー ド」。チャプターリードの仕事には、現場を支援することに加えて、採用、給 与、キャリア開発など、一般的なマネージャー業務のすべてが含まれる
- チャプターの利点はさまざまだが、チャプターが組織にもたらす一番の利点 はコミュニティ
- ギルド
- ギルドは、同じ専門分野に興味のあるメンバーからなるグループで、組織を横断して形成される
- チャプターとは異なり、ギルドは正式な組織ではない。そのため、直接的なネジメントやサポートは何も提供しない 。その代わり、ギルドは気軽な組織構造なので、誰でも自発的に作ってかまわないし、誰でも参加できる
- ギルドとチャプターの決定的な違いは、ギルドには誰が参加してもかまわないところ
- ギルドの役割としてさらに重要な点は、ギルドがメンバーに学習と成長への 道のりを与えていること
- 学ぶことの持つ力、すなわち、自分自 身が成長していると感じ続けられることは、勤勉でスマートな、知性豊かな人 たちにとってはこの上ない魅力だ。これこそ、最も優秀で素晴らしいメンバー を惹きつけ続けるための秘訣
- 意志決定をできるだけ現場に任せることが自己組織化につながる
5章 ベッドで方向を揃える
- この章では、テック企業がカン パニーベット(Company Bet)を活用して、全社を横断するコラボレーションを 可能にしている様子を見ていく
- Spotify が考案した枠組みは、全社レベルでフォーカスを絞るために、 一度に取り組むことを少なくするというものだった。社内ではこれを「カンパ ニーベット」と呼んだ
- カンパニーベットは、会社が取り組みたい重要事項を、終わらせたい順に並べたリストのこと
- ベットにはそれぞれ 2 ページ程度の概要が記述される。そこには、このベッ トが何なのか、なぜ重要なのか、どのように今後の会社の発展に資するのかが 簡潔に書かれている
- 概 要 の 2 ペ ー ジ の う ち 、1 ペ ー ジ は「DIBB」で 説 明 さ れ る 。 こ こ に は 、戦 略 チ ー ムがこのベットを作るきっかけになったデータやインサイトが記される。 DIBB と は、 デ ー タ(Data)、 イ ン サ イ ト(Insight)、 確 信(Belief)、 ベ ッ ト(Bet)それぞれの頭文字
- 数を絞った大きなベットに向けて会社がまとまることで、さまざまな利点が得られる
- 重要なことから終わらせていく
- 社内メンバーの流動性を高める
- フォーカスを強制する
- 全社横断の連携を可能にする
- やり抜くためのコツ
- 専任のロードマネージャーをアサインする
- 自分の部署よりも広い視野で考える
- コミュニケーションプランを考える
- 早いうちから統合する
- 大がかりな取り組みは時期をずらす
6章 テック企業で働くということ
- まとめ
- とても自律している
- とても自由度が高い
- 責任は重い
- 何をすべきかを直接指示する人はいない
- すべての情報は基本的にオープン
7章 生産性向上に投資する
- 「プロダクティビティスクワッド」は、他のエンジニアリングチームを速く進めるようにすることをミッションとしたチーム
- ビルドの自動化
- 継続的インテグレーションの基盤整備
- etc
- 「ハックウィーク」とは、エンジニアが通常業務を脇に置いて、自分の好きな ことをなんでもやれるイベントだ。Spotify では期間を 1 週間として年に 2 回開 催される。ここで新しいアイデアを試して、メンバーにイノベーションを起こし てもらうのが狙い
- Spotify は、しっかりと自律したスクワッドに信頼と権限を与えることでかな りうまくやってきた。そんな彼らでも、スクワッドが継続して改善に取り組んで もらうことは意識的に促していた
- 技術を「一級市民」として扱う
8章 データから学ぶ
- A/B テストで実験する
- Spotify では、データサイエンティストはこんな風にチームを支援している
9章 文化によって強くなる
- 会社が違えば文化も違う
- Spotify はチームのことを、次のような存在だと考えている
- 行動は言葉に勝る
- 「助けてほしい」
- CEO Daniel はみんなに助けを求めた。私はそんなことをする CEO を他に見たことがなかった
- このメールは 2 つのレベルで信じられないものだった。まず、従業員に対し てあんなに弱気を見せたり、正直になったりした CEO なんて見たことがなかった。それから、CEO が弱みを見せられるのなら、私自身もそうしていい んじゃないかと思った
- 「壊したのは私です」
- ある日、私の同僚が重要なシステムをうっかり壊してしまった
- 調査の結果、その障害を引き起こしていたのが自分だと気づいた彼は、トラ イブ全体に向けてメールを出した。そこにはどのような問題が、どのようにして起こったのかとともに、謝罪の言葉が綴られていた
- 上司の返信。「気にしなくて大丈夫です。よくあることですから。本番環境を壊すのは勲章 みたいなものです。壊したのはあなたが最初ではありませんし、最後にもならないはずです。それに、あなたに壊せてしまうような本番環境だという事実は、 私たちのシステムにはまだ改善の余地があることの証拠です。あなたが能力不足だからとか、新入社員だからとかいう話ではありません」
- フィーカは、チーム単位のコーヒーブレイクだ。みんなで集まっておやつと 一緒にコーヒーを飲む。フィーカは長年にわたってスウェーデン社会で中心的 な役割を果たしている
- ヤンテの掟
- 自分をひとかどの人物だと思ってはならない
- 自分のことを、みんなと同じだと思ってはいけない
- 自分のことを、みんなよりも頭が良いと思ってはならない
- 自分のことを、みんなよりもすぐれていると自惚れてはならない
- 自分のことを、みんなよりも物知りだと思ってはならない
- 自分のことを、みんなよりも重要だと思ってはならない
- 自分のことを、みんなよりも何かが上手いと思ってはならない
- みんなの事を笑ってはならない
- みんなが自分のことを気にかけていると思ってはならない
- みんなに何かを教えられると思ってはならない
- 「助けてほしい」
10章 レベルを上げる:ゆきてかえりし物語
- 目的で動機づける。スタートアップは、少なくとも最初のうちは、金銭では人を惹きつけられな い。高額な給与で有能な人材を集めることができないのだ。しかしスタート アップ企業があり余るほどに持っているものがある。それは、目的だ
- 本書で心から伝えたいことは 2 つだけだ。「権限を与えること「」信頼すること」。 以上。
- ユニコーン企業にできて、あなたにできないことなんてない。彼らと の違いは仕事に向き合う姿勢やマインドセット、仕事というものの捉え方、そ れだけだ。
訳者あとがき
- ユニコーン企業ではスクラムをやっていない
- ではスクラムをやらずにユニコーン企業はどうやって「なんだかうまいことやっている」のか。鍵は「自律、権限、信頼」であり、それらを可能にする組織 文化こそが「ユニコーン企業のひみつ」だというのが著者の主張
- 事実、「Spotify モデル」はそれ以後も変化していったよう。本書の説明との主な差分を簡単に紹介
- 「プロダクトオーナーとスクワッド(チーム)」という構成から、プロダク トオーナーもスクワッドの一員という位置づけになった
- トライブをまとめるリーダーチームとして「TPD Trio」が編成されるようになった(TPDはTribe Lead、Product Lead、Design Leadの頭字語)
- トライブ同士が連携するさらに大きな枠組みとして「アライアンス(Alliance)」という枠組みが導入された
- 本文でも繰り返し述べられているように、他所でうまくいっていること(プ ラクティス)をただコピーしてもうまくいきません。これは逆も然り
- バンドマニフェストによれば、Spotify のミッションとは「Spotify は目的駆動 の企業であり、強力なバリューと信念が私の戦略と日々の意思決定を導く」こと で、それを支えるバリューは次の 5 つ
- Innovate(革新する)
- Sincere(誠実である)
- Passionate(情熱を持つ)
- Collaborative(協調する)
- Playfu(l 遊び心を持つ)